二次イオン質量分析(SIMS)とは?
固体試料表面にイオンビームを照射し,スパッタリングにより生じた試料構成元素の二次イオンを検出します
分析イメージ
一次イオンビームを低エネルギー化した二次イオン質量分析装置を導入し、半導体中の浅い領域のドーパントの分析や薄膜多層膜の分析など、フローティング銃導入により高精度な深さ方向元素分布の測定が可能になりました。
特長
- スパッタリングによる深さ方向分析 深さ分解能:数nm〜
- 高感度&広いダイナミックレンジ 検出濃度10ppb〜1%
- 二次元&三次元分析
-
同位体分析
適用例(観察例)
- 1. GaNのSIMS分析 (TEM分析との複合分析)
- 2. GaN試料の深さ分布を正確に得るために 二次イオン質量分析
- 3. 超格子構造のSIMS分析
- 4. 深さ分解能評価関数を用いた真の拡散分布の推定
1. GaNのSIMS分析 (TEM分析との複合分析)
多くのSIMS分析事例から得られた知見を元に、多角的に評価します。GaNの分析においては、TEM像とSIMSプロファイルを重ね合わせることで、ドーパントの濃度分布と構造を視覚的に捉えることが可能です。GaNだけでなく、GaAs、InP等の材料にも対応します。
GaNのSIMS分析例
2. GaN試料の深さ分布を正確に得るために 二次イオン質量分析
GaN中の不純物分布はSIMSにより日常的に評価されています。しかしながら、O2+を一次イオンとしたSIMS分析では、通常のイオン照射条件で、波状の表面粗れが生じることがあります。測定中に生じる表面粗れは、深さ方向分解能を著しく劣化させるため、正確な深さ分布を得るためには好ましくありません。NTT-ATでは、分析時に生じる表面粗れを小さくする測定条件を把握することにより、深さ分解能の高い分析データを提供しています。

上図は、GaNをO2+により10 keV, 45°の条件でスパッタした表面のAFM像です。波状の凹凸が生じているのが明瞭にわかります。

上図は、GaNを種々の条件でO2+によりスパッタした表面の粗れ(RMS)です。O2+によりGaNを測定する場合、いずれのスパッタエネルギーでも45°近傍での入射は表面粗れが大きく、深さ方向分析には適さないことがわかります。
3. 超格子構造のSIMS分析例

上図は化合物超格子構造の電子顕微鏡写真です。
下図は化合物超格子構造において、1μmの深さに存在するInPデルタ層(8nm幅)を、高分解能で検出した事例です。

次の図は、Si中の8nmピッチのBデルタドープ層を、高精度で深さ方向分析を行った事例です。

4. 深さ分解能評価関数を用いた真の拡散分布の推定
SIMSのスパッタ深さ分析では、測定時の原子混合効果や表面粗れのため、得られた結果は、真の分布よりも広がったものとなります。そこで、この広がりの影響を深さ分解能評価関数を用いて予め見積もり、SIMS分析で得られた結果から、真の拡散分布を推定することが重要です。ここでは、深さ分解能評価関数としてMRI※法を用いて、シリコン酸化膜のSiの自己拡散分布の解析例を紹介します。 ※ MRI: mixing-roughness-information depth

熱処理前
左図は、天然同位体組成SiO2/28SiO2(未処理)構造の30Siの深さ方向分布です。
熱処理していないため、本来30Siの分布は青線のように急峻であるべきですが、SIMSの結果は赤線のように広がったものとなります。
この分布をMRI解析することにより、深さ分解能パラメータを決定します。
熱処理していないため、本来30Siの分布は青線のように急峻であるべきですが、SIMSの結果は赤線のように広がったものとなります。
この分布をMRI解析することにより、深さ分解能パラメータを決定します。

熱処理後
右図の赤線は、同構造の熱処理をした30SiのSIMSによる深さ方向プロファイルです。
熱処理前(上図)の解析により決定した深さ分解能パラメータを用いて、SIMSプロファイルを解析することにより、真の拡散分布を推定しました(青線)。
熱処理前(上図)の解析により決定した深さ分解能パラメータを用いて、SIMSプロファイルを解析することにより、真の拡散分布を推定しました(青線)。